糟谷研究室 メンバー

オオワライタケ(Gymnopilus
junonius)長野県根羽村で2011.6.10撮影

千葉科学大学 危機管理学部 環境危機管理学科 糟谷研究室

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教育普及活動


きのこ観察会での同定の様子(石川きのこ会,2012.11.4撮影)
 


 
 当研究室では,菌類(きのこ類)を主なテーマとして,地域社会と連携しながら多方面の教育普及活動を行っています。茨城県内の高校や各種団体と連携して,小中学生・高校生を対象とするきのこ観察会や調査研究の支援を行って
いるほか,全国各地のアマチュア菌類研究者の活動も支援しています。近年では,自ら専門的なテーマを設定して,きのこの分類学的研究を手がけるアマチュア研究者も多く,そのような方々と共同で,文献調査,走査型電子顕微鏡を用いた形態観察,分子系統解析などを実施し,アマチュア研究者の方々が主体となって研究に取り組めるように支援しています。また,研究の結果は各種学会や学術論文において公表できるように,アマチュア研究者の方々と一体となって取り組んでいます。

 また,専門的な研究,とまではいかないけれども,きのこや菌類に興味がある,という一般市民の方々を主な対象として,全国各地の自治体,官公庁やきのこ会等と連携して,きのこ観察会や講演会等の活動にも取り組んでいます。このほか,千葉科学大学が位置する銚子市はジオパーク事業を推進していることから,その活動も支援しているほか,博物館等と連携し,日本の中生代植物化石に関する情報発信にも参画しています。




☆小中学生および高校生を対象とした菌類に関する教育普及


アキノギンリョウソウ(茨城県行方市,2011.9.25撮影)

 茨城県立水戸第一高等学校生物同好会部では,校内に自生するアキノギンリョウソウの菌根について継続的な調査研究を行っており,2007年より,顧問の先生方と連携しながら,部員の生徒と一緒に調査研究に取り組んでいます。具体的には,葉緑素を持たない菌従属栄養植物であるアキノギンリョウソウが,どのようなきのこ類と菌根を形成しているのか,そして,アキノギンリョウソウの種子を培養条件下で発芽させることができるかどうか,等の課題を解明しようとしています。フィールドワークをはじめ,顕微鏡下での形態観察,室内での培養実験,DNA抽出やPCR等の分子生物学実験や,分子系統解析までの一連の作業を,部員の生徒と協力しながら進めています。過去には日本菌学会大会で生徒によるポスター発表も行われました。


これから,きのこ観察会に出発!(茨城県東海村,2012.7.16撮影)

 また,茨城県東海村に在住する小中学生の保護者により組織された自然観察サークル「東海村の環境調べ隊」では,毎年2回(7月と10月)開催される「きのこ観察会」の活動支援を行っています。ここでは,会員の小中学生等に対して,きのこの野外観察を指導しています。また,この団体では,行事の成果を「げんでんeまなびクラブ」といった調べ学習発表会の場で発表しており,そのまとめ方等についても指導しています。



☆アマチュア菌類研究者の活動支援


きのこ観察会でのひとこま(石川県小松市,2012.10.18撮影)

(教員の主要なこれまでの講演等実績)
       
1.千葉菌類談話会講演会「腹菌講座(ホコリタケ類を中心に)」    平成16年3月27日
概要:千葉県立中央博物館(千葉市)において,主に千葉菌類談話会の会員を対象に,ホコリタケ類を中心とした腹菌型きのこ類の分類,生態,種同定の方法について講義を行った。また,千葉県におけるこれらの菌類の分布の特徴について詳しく解説した。さらに,同博物館に収蔵されているホコリタケ類の菌類標本を用いて,顕微鏡観察の実習も実施した。

2.埼玉きのこ研究会講演会「腹菌類をめぐる話」    平成16年5月23日
概要:国立女性教育会館(埼玉県嵐山町)において,主に埼玉きのこ研究会の会員を対象に,ホコリタケ類を中心とした腹菌型きのこ類の分類,種生態,種同定の方法や,埼玉県におけるこれらの菌類の分布の特徴に関する講座の講師を務めた。

3.千葉菌類談話会講演会「腹菌類の系統分類と生物地理」    平成18年2月18日
概要:千葉県立中央博物館(千葉市)において,主に千葉菌類談話会の会員を対象に,腹菌型きのこ類の分類体系の変遷,地理的分布や,千葉県に分布する特筆すべき種類等に関して,講演を行った。また,同博物館に収蔵されているホコリタケ類の菌類標本を用いて,顕微鏡観察の実習も実施した。

4.幼菌の会講演会「砂浜海岸のきのこ: 分類と生態」    平成19年3月25日
概要:京都市に拠点を置くアマチュアきのこ研究者からなる団体,「幼菌の会」の会員を対象に,砂浜海岸に分布するきのこ類の多様性や生態に関する講座の講師を務めた。特に,日本の砂浜海岸に分布する,特筆すべききのこ類について詳しく解説したほか,菌類の視点から見た砂浜海岸の生態系の特徴や,人間活動が生態系に与える影響についても講義した。

5.みえ・菌輪の会講演会「砂浜海岸のきのこ: 分類と生態」    平成19年8月31日
概要:三重県のアマチュアきのこ研究者を中心とした団体,「みえ・菌輪の会」の会員を対象に,砂浜海岸に分布するきのこ類の多様性や生態に関する講座の講師を務めた。特に,日本の砂浜海岸に分布する,特筆すべききのこ類について詳しく解説したほか,菌類の視点から見た砂浜海岸の生態系の特徴や,人間活動が生態系に与える影響についても講義した。

6.北陸三県きのこ会交流会講演会「砂浜海岸のきのこ」    平成20年7月5日
概要:毎年1回,富山・石川・福井各県に本部を置くアマチュアきのこ研究会が集まり,交流会が開催されており,2008年度に金沢市で開催された交流会で,砂浜海岸に分布するきのこ類の多様性や生態に関して講演を行った。特に,日本の砂浜海岸に分布する,特筆すべききのこ類について詳しく解説したほか,菌類の視点から見た砂浜海岸の生態系の特徴や,人間活動が生態系に与える影響についても講義した。

7.みえ・菌輪の会講演会「虫を殺すきのこの話」    平成20年11月2日
概要:三重県のアマチュアきのこ研究者を中心とした団体「みえ・菌輪の会」の会員を対象に,きのこ類と菌食性動物との生態的関係に関して講演を行った。特に,きのこ類が,菌食性動物に対してどのような生態的防御機構を持っているか,という点に着目して解説した。さらに,ヒメミミズ類等の菌食性動物に対して殺傷作用を有するツブエノシメジの形態的・生態的特徴について詳しく述べた。

8.茨城県立竹園高等学校国際科講演会「虫を殺すきのこの話」    平成21年3月29日   
概要:茨城県立竹園高等学校国際科1年次の生徒を対象に,きのこ類と菌食性動物との生態的関係に関して講演を行った。特に,きのこ類が,菌食性動物に対してどのような生態的防御機構を持っているか,という点に着目して解説し,ヒメミミズ類等の菌食性動物に対して殺傷作用を有するツブエノシメジの形態的・生態的特徴について,動画も用いながら詳しく述べた。さらに,大学や大学院での実際の研究の進め方や,進路選択に際しての考え方等についても,自身の体験談も紹介しながら述べた。

9.伊奈町公民館生涯学習講座「きのこを通して自然を見る―伊奈町からサハラ砂漠まで―」    平成22年7月11日
概要:埼玉県伊奈町の公民館が主催する連続講座「伊奈大学I 心のふるさとシリーズ」の第4回「伊奈の自然I」を担当し,表題の講義を行った。本講座は,地域の自然環境や歴史等に関心のある一般市民の方々を対象としたもので,大学や高等学校の教員等を講師として招き,実施されている。今回は,菌類,特にきのこ類の分類・進化・生態等の基礎的内容や,菌類と人間社会のかかわり,また,埼玉県に分布する特筆すべき菌類の特徴等について講義した。

10.げんでんeまなびスクール(茨城県東海村 日本原子力発電東海事業所)「身近なきのこを観察しよう!」    平成22年7月25日
概要:日本原子力発電株式会社が主催する「げんでんeまなびスクール」の夏休みの行事の一つとして,表題の講座の講師を務めた。本講座では,茨城県内に在住する小学3年生〜中学3年生の児童生徒を対象に,きのこ類のかたちや暮らしの仕組みについて解説した。また,日本原子力発電東海事業所構内のマツ林を参加者と実際に歩き,きのこ類の野外観察を指導した。さらに,きのこ類を素材とした,夏休みの自由研究を進める上でのヒント等についても述べた。

11.茨城県立水戸第一高等学校 平成23年度特色ある学校づくり支援事業模擬講義「菌類・きのこの不思議に迫る」    平成23年7月2日
概要:茨城県立水戸第一高等学校の生徒および生物担当教員を対象に,菌類,特にきのこ類の分類・進化・生態等の基礎的内容や,菌類と人間社会のかかわり等について概説した。また,きのこ類の分子系統解析の方法や,分子系統解析により何が,どこまで明らかになるのか,ということについて講義した。さらに,大学や大学院での実際の研究の進め方や,進路選択に際しての考え方等について,自身の体験談も紹介しながら述べた。

12.国営ひたち海浜公園 里山パートナー研修「きのこ研修会」    平成23年11月6日
概要:国営ひたち海浜公園(茨城県ひたちなか市)で,園内の里山環境の保全管理を行っているボランティアスタッフ「里山パートナー」を対象に,園内のマツ林や雑木林を実際に歩きながら,きのこ類を採集し,その分類・生態について解説した。特に,きのこ類の視点から見た,園内の里山環境の特徴について述べた。さらに,採集したきのこ類を研修室に持ち込み,種同定の方法や,生態系におけるきのこ類の役割等についても講義した。

13.菌類懇話会講演会「形態と分子系統に基づくエリマキツチグリ複合種の分類学的研究」    平成24年3月11日
概要:東京都に拠点を置くアマチュアきのこ研究者からなる団体「菌類懇話会」の会員と,東京農業大学の学生・教員を対象に,東京農業大学において,自身の博士課程の研究内容に関する講義を行った。

14.第3回オオウメガサソウ保全シンポジウム〜オオウメガサソウをどう守るか〜(国土交通省関東地方整備局 国営常陸海浜公園事務所)講演「オオウメガサソウを支えるきのこたち」    平成24年6月17日
概要:国営ひたち海浜公園(茨城県ひたちなか市)に自生し,日本の分布南限である希少植物,オオウメガサソウの保全に関するシンポジウムにおいて,表題の講演を行った。オオウメガサソウときのこ類との菌根共生について,これまでの野外調査の結果から明らかになったことを述べ,今後の研究の展望をまとめたほか,オオウメガサソウの適切な保全管理の在り方を提言した。

15.小松市職員教養講座(小松市人事育成課)「きのこのチカラ〜ほんとはすごい!きのこのヒミツ〜」    平成24年7月25日
概要:石川県小松市役所の職員を対象に,菌類,特にきのこ類の分類・進化・生態等の基礎的内容や,菌類と人間社会のかかわりについて講義した。また,石川県に分布する特筆すべききのこ類の特徴等について解説した。さらに,きのこ類の視点から見た里山環境の現状や,里山の適切な保全管理に求められる今後の在り方についても述べた。

16.憩いの森学習会(小松市農林水産課)「憩いの森できのこを探せ!」    平成24年10月18日  
概要:小松市農林水産課主催の「憩いの森学習会」の一環として,石川県小松市の市民を対象に,市内の森林公園「憩いの森」で,きのこ類の野外観察講座の講師を務めた。公園内のマツ林や雑木林を実際に参加者とともに歩きながら,きのこ類を採集し,その分類・生態について解説した。また,採集したきのこ類を研修室に持ち込み,種同定の方法や,生態系におけるきのこ類の役割等についても講義した。




☆銚子ジオパーク推進市民の会の事業支援

 

 銚子市には,屏風ヶ浦(写真左,2007.6.3撮影)や犬岩(写真右,2013.2.3撮影)など,地学的に優れた要素が多数あります。このほか,渡海神社の極相林や,猿田神社の社叢等,独特の植生景観も保存されています。銚子ジオパークでは,これら銚子の多様な自然景観,そして自然にはぐくまれながら継承されてきた文化・風土を調査・保全し,活用発信していくために,さまざまな活動を行っています。当研究室では,特に銚子ジオパーク推進市民の会と連携して,自然体験教室等の活動支援を行っています。この活動には学生にも積極的にかかわるように呼びかけ,地域社会との交流の機会をつくるとともに,多様な地域資源の価値を実感し,自分たちが暮らす地域に誇りを持つきっかけとなれば,と考えています。


渡海神社の極相林(2013.3.23撮影)



☆日本産,特に来馬層群と手取層群産出の植物化石標本に関する情報の発信

    
 中生代の植物化石に興味を持つアマチュア研究者や,福井県立恐竜博物館小松市立博物館等の研究者と連携して,日本の中生代植物化石を世の中に発信しよう!という取り組みに参画しています。日本の中生代植物化石は,古く明治時代から研究されて きました。専門的な学術論文は数多く発表されてきましたが,一般向けの平易な解説書や図鑑等はこれまでになく,一般市民に対する情報の発信が不足しています。このため,化石や地学に興味を持つ一般の方々が,植物化石に触れる機会があっても,その名前がわからなかったり,あるいは名前を調べようと思っても,調べるとっかかりがつかめない,という現状があります。


つる性のソテツの仲間,Nilssoniocladus nipponensisの化石(石川県の目附谷:手取層群産出,小松市立博物館蔵)

 日本では,主に長野・新潟・富山県境に分布する来馬層群や,石川・福井両県に分布する手取層群から,多数の中生代植物化石標本が収集されています。これらの地域では,多様なシダ類,イチョウ,ソテツやマキの仲間等の植物化石が,これまでに発見されてきました。これらの大部分の標本は,小松市立博物館に一括して収蔵されています。そこで,小松市立博物館に収蔵されている標本を中心に,日本の中生代植物化石に関する情報のデータベース構築と一般公開を目指しています。また,この活動にかかわっている有志で不定期に集まり,全国各地に点在する中生代植物化石産地の巡検も行っています。2012年は長野・新潟県の来馬層群に巡検に行きました。2013年は群馬県の岩室層群に行く予定です。


新潟県糸魚川市の来馬層群露頭(2012.11.25撮影)


糟谷研究室 メンバー

〒288-0025 千葉県銚子市潮見町3番地 千葉科学大学 危機管理学部 環境危機管理学科 糟谷大河(E-mail: tkasuyaアットマークcis.ac.jp #アットマークを@に変えてください)

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2013.5.9 T. Kasuya