日本菌学会第52回大会(三重大学),2008年5月(ポスター発表)要旨

シラカシ林におけるアキノギンリョウソウの菌根の形態と菌類の子実体の空間分布



○会沢春佳1)・木村 駿1)・戸祭森彦1)・関根さゆ里1)・久野恵里香1)・園井 梓1)・糟谷大河2)・柿嶌 眞2)(1)水戸一高生物同好会部;2)筑波大院生命環境)
Mycorrhizal morphology of Monotropa uniflora and spatial distribution of fungal sporocarps in Quercus myrsinaefolia forest by H. Aizawa1), S. Kimura1), M. Tomatsuri1), S. Sekine1), E. Kuno1), A. Sonoi1), T. Kasuya2), M. Kakishima2).
(1)Mito Daiichi High School; 2)Univ. Tsukuba)

 シャクジョウソウ科のアキノギンリョウソウは無葉緑植物で,炭素源を根状組織に共生する菌類に依存すると推定される.本種に近縁なギンリョウソウは,ベニタケ属菌類と菌根共生していることが明らかになっている.しかし,日本に分布するアキノギンリョウソウの菌根の形態や,その共生菌は不明である.本研究では,茨城県水戸市の茨城県立水戸第一高等学校内のシラカシ林において,自生するアキノギンリョウソウを採集し,根状組織の形態を光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡を用いて観察した.その結果,根状組織には菌鞘とペグ状構造が認められ,アキノギンリョウソウはモノトロポイド菌根を形成することが確認された.走査型電子顕微鏡観察では,菌根表面に,アンプル形で頂端に結晶を有するシスチジアがまばらに存在することが発見された.このシスチジアはベニタケ属菌類の外生菌根に形成されるシスチジアと形態的に類似していた.

 さらに,アキノギンリョウソウが自生するシラカシ林内で,発生する菌類の子実体の空間分布を明らかにするため,2007年9月から11月にかけて10m×14mの調査区を設置し,それらを1×1mの方形区に区画し,アキノギンリョウソウと菌類の子実体の発生数と発生位置を記録した.子実体は採集して乾燥標本を作成し,同定した.空間分布の解析には平均こみあい度と種間平均こみあい度を用いた.その結果15種の菌類の子実体が得られ,発生数が多かったのはベニタケ属のカワリハツとオキナクサハツであった.なお,これらの菌はシラカシに外生菌根を形成していた.また,アキノギンリョウソウと菌類の子実体の発生数が最も多かったのは9月であった.以上から,シラカシに外生菌根を形成するベニタケ属菌類がアキノギンリョウソウと共生し,栄養を供給している可能性が示唆された.



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