Diary 2007. 9
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9月29日 (土)  水戸一高で

今日は水戸市の水戸一高に出かけてきた.高校の校庭の一画にアキノギンリョウソウが発生しており,高校の生物部がその菌根の調査を始められたため,手伝いのため伺った.アキノギンリョウソウは,シラカシなどの疎林の中に群生していた(画像1).周囲にはベニタケ属のきのこが多く発生しており,アキノギンリョウソウとの菌根共生が疑われたため,植物ときのこの両者を掘り取り,実験室に持ち帰って菌根の観察をおこなった.シラカシ実生の外生菌根はきれいに観察でき,アキノギンリョウソウのモノトロポイド菌根も,鮮明ではないながらも何とか,菌鞘や植物細胞内に侵入したpegを見ることができた.今年以降,きのこやアキノギンリョウソウの発生の空間分布を調べるとともに,菌根の形態観察を継続するとのことで,今後の結果が楽しみである.

水戸一高は水戸城の跡地にあり,校庭は起伏が多い.体育館のそばのマツの樹下には,やや大型のヒメツチグリ属菌が散生していた(画像2).また,グランド近くの斜面には,オニフスベの老菌がごろごろと生えていて(画像3),様々な小動物がよってたかって子実体を食していた.生物部の顧問の先生方や,部員の生徒の皆さんには大変お世話になり,ありがとうございました.

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9月27日 (木)  念願のアカヒトデタケ

今日,念願かなって,野外に発生したアカヒトデタケを観察することができた.栃木県立博物館の先生のお計らいで,栃木県塩谷町のアカヒトデタケの発生現場をご案内頂いた.現場は,湿度の高い雑木林と畑の境界に薄く散布された籾殻上で,近くには生ゴミを廃棄するコンポストがある.籾殻上に,腕を開いた成菌(画像1),今にも腕が伸びてきそうな菌蕾,腕が開く途中の子実体,そして腕が伸びきった老菌(画像2)に至るまで,数十個の子実体が生えており,たっぷりと観察することができた.

子実体は菌蕾から腕の先端までの高さは3-4.5cm,腕を開いた直径は2-3.5cmほどのものが多かった.グレバは魚が腐ったような臭いで,ギンバエと思われるハエ類が盛んに飛来し,グレバを舐めていた(画像3).生態写真を撮影し,標本用に菌蕾と成菌をいくつか採集させて頂いた.これらの標本は後ほど国立科博に寄贈し,凍結標本にして頂き,展示用標本にするとともに,子実体各部のSEM観察等をする予定である.貴重な発生現場をご案内頂いた皆様,ありがとうございました.

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9月26日 (水)  ヒメホコリタケ,ヤナギ

23日に北海道石狩市で,3個が合着したアカダマスッポンタケの菌蕾(画像1)を採集し,水苔を敷いたマットの上に載せて北海道から空輸した.菌蕾は新鮮な状態でつくばに到着し,3個の菌蕾から,子実体がすでに成長していた.うまく凍結乾燥標本にできるとよいのだが.

石狩市厚田区の無煙浜では,ヒメホコリタケ属のきのこ(画像2)が目立った.このきのこは芝生や草地によく見られるVascellum curtisiiのようであるが,写真のような完全な砂地で採集された例は少ないと思う.わたしも海岸で採集したことはあるが,土や腐植が比較的多いところでの採集例はあるものの,このような完全な砂地といったよい環境では初めてである.また,無煙浜では,砂地にぽつんと生えたアカメヤナギ(画像3)に,Melampsora属菌と思われるさび菌が大量についているのが印象的だった.ヤナギ類に寄生する本属菌の中間宿主となるケシ科植物は,このヤナギ周辺の砂地には見当たらなかった.胞子はどこへ飛んでいくのだろうか.

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9月25日 (火)  アカダマスッポンタケ

22日から今日25日まで,北海道に出かけていた.23日に石狩市の石狩川河口付近の砂浜海岸から,石狩市厚田区の無煙浜周辺を探索した.石狩川の河口付近では,アカダマスッポンタケが例年になく多量に発生していた.かさを大きく開いた成菌(1, 2)から,赤紫色に変色しつつある菌蕾(画像2),さらには,コウボウムギの根茎にくっついた,直径2cmほどの幼菌に至るまで,十数の子実体を観察することができた.2005年以来3年連続の発生を確認したが,今年が最も子実体の発生が多い.また,今回発生した子実体は,従来確認済みのハマニンニクやコウボウムギの根茎を基質とするものだけでなく,ハマニガナの根から子実体を発生させているものも見られた.一方,厚田の無煙浜ではアカダマスッポンタケは見られなかった.本種以外のきのこの姿は割合に少なかったが,ザラミノシメジ属,ハラタケ属,コガサタケ属,フミヅキタケ属,ナヨタケ属,ヒメホコリタケ属,シバフダンゴタケ属などのきのこが例年と同様に発生していた.さわやかな気候の中で楽しく海岸を探索することができた.

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9月22日 (土)  骨になっても

いきなり変な話だが,亡くなった人の遺骨を墓地に納めるときに,全国的には,骨壷ごとお墓の下に安置するのが一般的のようだ.ところが,長野県北信地方では葬儀の際に骨壷を使わない.木製の骨箱に遺骨を入れ,四十九日まで自宅で保管される.四十九日に納骨するが,このとき,骨箱から遺骨を親戚一同が手で取り出し,骨をそのまま,お墓の下に入れる.お墓の下は土壌がむき出しの状態で,土の上に骨をじかに置くので,文字通り,骨を土に還すのである.といっても,骨が土に還るまでには,かなりの年月がかかる.だから,先祖代々の墓では,以前に亡くなった先祖の骨の上に,新たに亡くなった人の骨を積み重ねていく状態になる.

先週,法事で長野市に行ったときに,うちが門徒になっている寺の住職さんに教えていただいたが,最近では,骨を分解しやすくするために,墓の下の土壌に,骨の分解剤を混ぜるところもあるらしい.骨はケラチン分解菌やバクテリア等によって少しずつ分解されていくが,有機物の少ないお墓の下の土壌には,このような菌類やバクテリアの力だけでは,なかなか分解が進まないらしい.したがって,人為的にこれらの微生物の力を活性化させるような薬品が開発されたようだ.ただ,あくまでも自然の力のみで骨を分解させるのがよいので,そのような薬品を用いるのは宗教的には得策ではないとのことだった.

お墓の下の土壌中の菌類相を調べた人がいるのかどうか知らないが,もし墓地の土壌にケラチン分解菌やそれに類する菌類がたくさんいるとしたら,興味深いことだ.それこそホネタケ目の菌類の多様性が高いということもあるかもしれない.それにしても,人間は,骨となっても菌類のお世話になるということで,妙に感心してしまった.


9月21日 (金)  アカヒトデタケの発生

栃木県の博物館の先生から,アカヒトデタケの発生に関する情報を教えていただいた.栃木県内の某所で,アカヒトデタケが生え始めたという.アカヒトデタケは命名法上の有効な記載がなかったので,とりあえず学名のvalidationをして有効発表の手続きだけはしたが(Mycoscienceの次号に掲載予定),わたしは野外での子実体を観察したことがまだなく,生態や分布に関する知見も不足している.栃木県で今日,発生が確認された場所では,まだ菌蕾のものもあるとのことなので,来週中には,現地を訪れて観察をさせていただきたいと思っている.このきのこ,栃木・茨城など北関東での発生例が多いようだが,もともとイカタケ属のきのこは熱帯系と思われるので,九州や四国など,より温暖な地域にも分布していてよさそうなものだ.また,日本以外からはまだ報告がないが,アジアの暖温帯以南では,日本以外にもありそうな気がするのだが.


9月20日 (木)  指名手配: ツブエノシメジ

秋のきのこシーズンも始まって参りましたが,指名手配として,ツブエノシメジの提供のお願いを,この場を借りてさせて頂きます.現在,ツブエノシメジの生態学的研究をしておりますが,分離培養と子実体形成試験のために,ツブエノシメジの生の子実体を探しています.もし,これからの時期に,ツブエノシメジの発生を見かけられましたら,以下の要領で,生の新鮮な子実体をご恵与頂ければ幸甚です.何卒よろしくお願い申しあげます.

(1) まず,メールなどでご連絡頂きたく存じます.不在の時に届くと腐敗しますので.
(2) 甚だしい虫食いがあったり,腐敗が進行したきのこ,また,すでに乾燥した子実体は,分離培養ができませんのでご遠慮下さい.
(3) 子実体の送付方法は,こちらから差し上げる返信メールにしたがってください.
(4) 採集記録(年月日,採集地,採集者,周辺の環境)を必ずお教えください.
(5) 関東近県では,日程が合えば,直接,採集と現地の観察に赴きたく思いますので,まずは,子実体を採集&発送される前に,メール等でご連絡ください.
(6) 糟谷のメールアドレス: tkasuya@sakura.cc.tsukuba.ac.jp


9月19日 (水)  イグチ3種

今日の夕刻,大学の研究室の机の上にきのこが入った紙袋が置いてあった.中を見ると,ムラサキヤマドリタケ(画像1),ヤマドリタケモドキ(画像2),ミドリニガイグチ(画像3)がごろごろと入っていた.研究室の先生が,大学構内で採集してきたものだった.ヤマドリタケモドキはつくば周辺の広葉樹が主体の雑木林で,夏から秋にかけてよく見られる.ミドリニガイグチも夏には比較的多く見られる種類である.しかし,ムラサキヤマドリタケは,つくば周辺ではあまり見かけない.学内で見たのもわたしはこれが初めてである.ムラサキヤマドリタケは色合いがきれいで,姿も立派で,かつ味もよい食菌なので,好きなきのこのひとつである.

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9月18日 (火)  野ノ海で

昨日,長野県栄村の野ノ海池周辺の高層湿原(画像1)で,ブナと思われる広葉樹の落枝上に小さなきのこが出ていた.普段なら見て見ぬふりをして通り過ぎるのだが,かさの表面に圧着した白色の鱗片を有しているのが印象的だったので(画像2, 3),採集した.形態的にはナヨタケ属のきのこのように見えるが,自信がない.乾燥標本にしたら,縮こまってみすぼらしい姿になってしまった.ヒントをご存じの方は,ぜひ教えて頂ければありがたいです.

昨日は,連休の最終日ということもあって,夕方の高速道路は大変な混雑であった.栄村から長野市を経て,菅平から佐久まで一般道を走り,佐久から上信越道を利用したが,関越道は埼玉県内から40kmに及ぶ渋滞だったため,埼玉方面には行かず,高崎から北関東道で伊勢崎インターに出てつくばに帰った.群馬県内の北関東道は初めて利用したが,伊勢崎インターから国道50号にスムーズに出れば,つくばまでも割合と早く行けるので,利用価値は高そうである.

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9月17日 (月)  海の見えるブナ林

15, 16日と法事などの用事のため長野市に滞在した.菅平での菌学会関東支部の菌類観察会には行けなかったが,今日は早起きをして,信越国境の野ノ海池・深坂峠周辺のブナ林を散策してきた.長野県栄村から新潟県松之山を結ぶ深坂峠越えの林道を走っていくと,鞍部のブナ林を切り開いたところに深坂峠の標柱があり,そこから新潟方面の山々が展望できる.今日は蒸し暑いがよく晴れたため,八海山,黒姫山,弥彦山をはじめ,日本海の姿も眺めることができた.長野県内に(県境ではあるが),海が見えるブナ林があるというのもかなり珍しいだろう.深坂峠から長野側に少し戻ると,野ノ海池という割と大きめの池があり(画像1),その周囲にはスゲ類からなる高層湿原が残っている.さらに,池や湿原を取り囲むようにブナの原生林が広がっていて,標高1,000m前後の場所ではあるが,立派な大径木も見られる.朝は静かで,ぶらぶら歩くにはよい場所である.

ブナ林では,定番のツキヨタケ(画像2)をはじめ,フクロツルタケ(画像3),アセタケ属菌,傷つけると青変するきのこの仲間(採集しなかった)など,毒きのこが多く見られた.イグチやベニタケの仲間も見られたが,9月のブナ林にしてはきのこの姿は少なかった.ブナに混じって,ミズナラやシラカバも生えているので,マイタケやベニテングタケも生えていないかと思ったが,見つからなかった.今日は長野県北信地方では,フェーン現象により日中の気温が34℃近くに達し,9月中旬とは思えない蒸し暑い陽気だった.きのこもこの陽気に,さぞびっくりしているだろう.

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